2021年度第2回事前学習


 

6月18日、Web会議サービスであるZoomを使って勉強会を行いました。「受信者・発信者双方向におけるメディアリテラシー」と題して、株式会社goen°の森本千絵様にご講演いただきました。

講師略歴


 

1976年青森県三沢市で産まれ、東京で育つ。 目的があり、人に伝えるための絵作りに早くから目覚め、中学生の頃から広告会社を目指す。 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を経て博報堂入社。 2007年、もっとイノチに近いデザインもしていきたいと考え 「出会いを発見する。夢をカタチにし、人をつなげる」をモットーに株式会社goen°を設立。 現在、一児の母としてますます勢力的に活動の幅を広げている。

goen°のコンセプトとプロフィール


伝える、広げる、整理する、要約する、笑顔にするを大事にしている。伝えたいことをしっかり伝えるという思いがなければ伝わらないという考えの下、世界観を作って人を呼ぶということをやらせて頂いている。例えば、音楽だとポスタービジュアルを作ったり、CDの形状からPVまで作ったりしている。他に保育園の空間のデザインや歯医者さん、動物園などの空間をデザインしている。

広告との出会いと大学時代


 

 大学二年生のときにMacが発売された。それまで広告が世界観を創るということは考えられなかったが、MacのCMは独自の世界を作った。理数系に進学するつもりだったが、そのときのCMに感銘を受けて広告業に着くことに決め、博報堂を目指した。卒論では成人式の着物代をポスター台にし、Macを使った写真を撮った。しかし、博報堂の人にありきたりなものであり、もっと大学生だからこそできることをやるべきだと言われる。そのことから、人が思ったところと違う所に線が引かれる装置を作るが、誰が評価したらいいのかわからず、評価されないまま卒業を迎える。

初仕事


 

会社に入って最初の仕事がミスチルのアルバム作りだった。それと同時に、歌を作って街を彩るという沖縄の広告に出会った。これを書いた人を探し出して欲しいとお願いし、沖縄中を探してもらった。当時中学生の子が書いたことが判明すると、その子たちを呼び出して一緒にはじめての広告を作った。堤防に水性の絵の具で書いていたため、スコールが降ったときはもうだめかと思っていたが、翌朝製作現場に行くと町の人たちがビニールシートをかけて守っていてくれていた。その人たちの思いに胸を撃たれ、仕事よりも思いが先に来るという状態の中で作業を行った。

博報堂での気づき


当時はSNSがなかったので、広告はメディアの中でも特にテレビに取り上げられていた。なので、もっと人に言いたくなるような広告を作ることに注力していた。そこで、広告をレースで抜いて人が見挙げられるような広告や幸福なニュースだけを切り取って新聞を読むことを換気したりする広告を作った。幸福なニュースの一つに足が不自由なおばあちゃんのゴミ捨てを近所の男の子が代わってあげるというものがあった。そのニュースに興味を持ち、そのおばあちゃんのもとを訪れた。そのおばあちゃんに広告とは何だと聞かれ、答えると、「貴方はご縁を作っているのね」と言われ、そのとき、自分が何をしているのかということを知り、独立することを決心する。細胞は恐怖を記憶するというらしいが、これからの子供の細胞にはたちにはメディアを作る人間として、幸福を記憶してほしいと思った。同時並行していた仕事にミスチルのCDジャケットの作成があった。ミスチルの桜井さんに「70%が水と言うくらいアナログなものを作って」言われており、悩む中、危篤状態にあった祖母が死ぬ前にクリスチャンになると言い出す。家族で洗礼などを受ける中、場所や時間に囚われない家族間の絆から、家系図というものは何があっても揺るがないということを思い、そのことを提案する。そのアイディアは実際にHOMEというアルバムの表紙となった。「ご縁」という言葉と私たちは家という場ではなく家族として繋がっているということを感じたことから、博報堂の人とは繋がっているということを感じ、HOMEの発売日に博報堂を辞めた。HOMEの歌詞に「なんでもない作業が回り回って目の前の人に繋がっていく。」という歌詞があるのだが、それが本当に広告に当てはまると感じた。

大切にしていること

 

「想像力会議」という子どもたちと三菱地所の人が話し合うという誰でも参加できる会議のCMを作った。大人になっても子どもの頃の想像力で正解だけではないものに辿り着こうというメッセージである。また、SONYと一緒に作ったCMに好奇心のスイッチを押そうというコンセプトのものがある。日常のいたるところに好奇心のスイッチがあるということを知った。このときから「誰でも参加できる」や「日常の好奇心」というものを大切にしたいと思った。

今までの習慣と最近の生活


 新聞に日記をつけるという習慣を持っている。その日の新聞にその日の出来事の絵をかき、その日食べた焼き鳥の串など、なんでも貼り付ける。これは同時期に起こった関係のないものを結び付ける練習になる。

 

 最近のおうち時間では青森の駅にステンドグラスを作っている。

広告作りにおけるモットー


 今までの広告の作品は自分で採集している。作品はすべて手作業で作るようにしているため、作る過程に時間がかかってしまうが、作っている時間も大切だと思っている。その時間もご縁なのである。関わるスタッフ一人一人の心も楽しませる過程も大切である。広告自体もある種結果だが、広告が出てる現場も過程である。全てのコミュニケーションをデザインしていくという形でやらせて頂いている。一人一人が未来にとって責任のある作り手であると考えている。今回の講演もご縁なので、大人になったら仕事ください笑

 

質疑応答


Q1.これから来る広告とは。

A1.人間が生き物として変わらない限り、根本の感動や興味は変わらないと思う。ある時から1から100の広告が1から1に変わった。広告のありかたに対しては、時代の荒波に流されても全力でやっていたらいいと思う。時代が変わっても、常に感じる心を持っていてほしい。人の意見だけを正論として、無関心でいるのは新しいものでも人の気持ちに残るものではないと感じているし、そう望んでいる。

 

Q2.今までの広告の本は論理的なものが多い。しかし、森本様の広告は感覚的なものだった。論理的なものと感覚的なものにおいて商品の相性はあるのか。

 

A2.あると思う。商品の機能をきちっと伝えた方がいいものもある。商品を作る過程であったり、商品そのものだったら、それがいい。あるものの世界観を示したいものは、感覚的なもの延長にある空気によって表現した方がいい。相性は本当に大切で毎回その性格を考えるところから始まる。一概に感覚的と論理的の2つに分けられないし、商品の数だけ存在している。

 

所感


 

 

今回の御講演はメディアリテラシーということをテーマにしてお願いさせて頂いていたのですが、メディアリテラシーには広告を作る人の思いや心意気の部分が大切なんだなということを感じました。僕はこの気持ちが大切ということは広告制作に留まらないと思います。森本様のように、ご縁を大切にするという気持ちや皆で広告を作り上げるという気持ちを持って、メディアリテラシーだけでなく人としてのリテラシーがある人になりたいと思います。

 

文責:加地健