2015年度 第6回リフレクション

高齢化社会といのちの居場所


 今回の定例会では、事前学習や宮木大様のご講演を通じ深めてきたテーマである「高齢化社会といのちの居場所」について、ディベートを行いました。

ディベートテーマ


 今回のディベートテーマは「介護士の賃金の引き上げを行うことは、介護士不足問題を解決するかどうか」です。団塊の世代が高齢者になる2025年には、日本国内において介護需要が多いに高まることが予測されており、介護士不足は現在の喫緊課題であるとされています。

 果たして、介護士不足を解消することを目的として、介護士の賃金を上昇させることは効果的な政策なのでしょうか。今回は、班を肯定派と否定派に分け、討論を行いました。以下、それぞれの主張になります。

肯定派


・ 介護士の賃金上昇は、介護士の社会的地位の上昇に繋がる

 

・ 介護報酬は、国民が支払う介護保険料の額に左右される。そのため、

    介護保険料を引き上げることにより、賃金上昇のための財源を獲得する  

    ことができ、極めて実現可能性の高い政策であると言える

 

・ 介護士の給料の低さが介護士不足の要因である。なぜなら、労働組合の

    調査によると、介護職員の賃金は月額平均20万円余りで、全ての産業  

    の平均よりも約9万円低い水準となっている

 

・ 介護士の賃金上昇は、介護士の職業イメージの向上に繋がる。なぜな

    ら、介護職に対するイメージとして、回答者の54.3%が「給与水準が低

    い」と回答しており、賃金上昇はそのイメージを変化させることができ

    るからである。その結果、介護職への就職希望者が増加することが見込

    まれる

否定派


・ 賃金の上昇だけでは、介護士不足の問題は解決できない

 

・ 2013年の介護労働センターの調査によると、介護士採用が困難な理由

    は、夜勤の多さや長い労働時間等の厳しい労働環境が主な原因であるこ

    とが分かった。そして、上記の労働環境は、賃上げにより直接的に解決

    される性質のものではないと考えられる。つまり、賃上げは介護職への

    就職希望者を増加させる可能性はあるが、最終的には、厳しい労働環境

    を原因として離職する者が多いことが予想され、介護士不足を抜本的に

    解決することは困難である。

 

・ 現在日本には、約160万人の介護職員が存在するが、国の試算による

    と、2025年には232〜244万人もの介護職員が必要になってくる。そ

    して、日本は人口減少社会であるため、2013年には6577万人いた労  

    働人口が、2025年には6310万人にまで減ってしまうと予想されてい

    る。つまり、日本は将来的に労働人口が減る一方で、介護士への需要は

    増加する傾向にあるということであり、その課題が賃金の上昇により解

    決することは極めて困難であると考えられる。

所感


 今回は、「介護士の賃金の引き上げを行うことは、介護士不足問題を解決するかどうか」をテーマに定め、私は否定派の立場から議論を展開していきました。私はディベートの準備に際し、現在の日本の介護業界が非常に重要な局面を迎えているという印象を強く受けました。なぜなら、今後の介護需要の高まりが確実に予測される一方で、現状ではそれに対する政策が十分に実行されてはいないと感じたからです。そして、その重大課題を解決していく主体は、私たちのような若い世代であることも改めて実感しました。そのため、今後は若い世代が、厳しい現状を正確に把握し、それへの解決策を議論し、早急に実行に移していかなければならないと考えました。

 

 

文責 南部久翔