2016年度 第4回事前学習

医師不足と医療崩壊 ~これからの日本医療~


 9月30日、日吉キャンパスにて第4回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「医師不足と医療崩壊〜これからの日本医療~」です。今回は、今西と齋藤によるファシリテーション形式で、本テーマについて日本の現状と今後の展望を考察しました。以下はその内容です。

医療に関する諸問題


 今回のテーマを考えるにあたり、改めて医療に関する諸問題について考えました。サークル員からは、「救急車がタクシー代わりにされている問題」や「医療訴訟の増加」などの問題が挙げられました。一般的には、地域や診療科の偏在、薬害、医療費の増加なども挙げられます。

 

 今回は、様々な問題がある中で、特に医師不足の問題について深く考察していきます。

日本医療の現状


 医師不足と言われる日本ですが、医師数自体は年々増加傾向にあります。

 

 しかし、日本は人口当たりの医師数が先進国中最低です。平均医師数は、OECD平均の2/3しかありません。先進国の多くは医師数を実働医師数でカウントしています。つまり、高齢であったり、産休により実働していない医師は、医師数に含まれません。ところが、日本の場合、医師免許を持った医師全員がカウントされています。その結果、日本の現場の勤務医は大変な過重労働の上に一人何役もこなすことを余儀なくされています。

 

 さらに、若い医師ほど労働時間が長く、過労死認定基準を大きく超えていることが示されました。

医師不足の原因


 次に、医師不足の原因とは何かをグループで話し合いました。サークル員からは、「医師を育てるコストが高い」や「医師の数自体が足りていない」という供給側の問題と、「患者の数が多すぎる」という需要側の問題が挙げられました。

 

 一般的には、医療費抑制政策、日本医師会の反対、医療の専門化、医者の労働環境、医療訴訟の増加などが挙げられます。

日本の医療費


 医療費抑制政策の話から、日本の医療費について考えてみました。日本の医療費は年間で9兆円に上り、年々増加傾向にあります。少子高齢化とそれに伴う人口減少の中で、ますます医療費が増大すると考えられます。このような中で、医師不足の問題をどのように解決していく必要があるのかを考えました。

医師不足への対策


 医師不足への対策について考えるため、「日本は医師数増加のために、医療費抑制政策をやめるべきかどうか」という問いについて、グループ内で話し合いました。医療費抑制政策を続けても問題ないと考えたグループからは、「医療費は、技術革新で補えるのではないか」「将来的には日本の人口が減少していく」という意見が挙げられました。また、医療費抑制政策をやめるべきと考えたグループからは、「国民の医療費負担を上げることで解決できる」などの意見が挙げられました。

 

次に、医師数を単純に増やすと質が低下するのではないか、という考えから「緊急に対応できる粗悪な病院と、緊急に対応できない質の高い病院では、どちらが良いか」という問いについて、グループで話し合いました。「多少粗悪でも、受診してもらえる方が良い」という患者目線の意見や、「対応数が多いと、医師の負担が重くなる」といった、医者目線の意見も挙げられました。

所感


医師不足の問題は、単に医師の数を増やせば良いというわけでなく、需要側をどう減らしていくかを考えていくことが大切だと感じました。長期的には減少していく日本の人口を考えると、いたずらに医師の数を増やすよりも、業務の機械化により効率を上げていくことも良い選択肢であると考えました。

 

今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。

文責:齊藤涼太郎