2015年度 第4回事前学習

ヒトゲノムの解読と人間の理解


 6月19日、日吉キャンパスにて第3回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「ヒトゲノムの解読と人間の理解」です。今回は宮田と中井によるファシリテーション形式で、本テーマについて日本の現状と今後を展望しました。以下はその内容です。

ヒトゲノム計画


 ヒトゲノム計画とは、ヒトの染色体の遺伝情報をすべて解読し、染色体のどこにどんな遺伝情報が書かれているのかを明らかにしようとする計画です。2003年にこの計画は完了しており、およそ2万2千個の遺伝子が解読されています。

ゲノムとは


 細胞の中にある核には、染色体があります。染色体は、らせん状の構造をしたDNAがタンパク質に巻き付いてできたものです。DNAは、遺伝情報を有する部分である遺伝子と、そのような遺伝子を調整する部分で構成されています。そして、ゲノムは、DNAのすべての遺伝子情報を指し、ヒトのDNAの大部分を構成する「遺伝子でない部分」も、新たな発見の可能性を秘めた未知数な部分として含みます。

 

遺伝子診断


 遺伝子の情報を読み取ることが可能になり、現在では遺伝子解読キットが販売され、簡単に遺伝子情報を知ることができるようになっています。例えば、糖尿病やアトピーなどの疾患のリスクや、身長やIQといった体質を解析することができます。

人間の体質、能力と遺伝子情報の関係


 遺伝子診断で解析される個人の体質や能力は、本当に遺伝子情報のみで決定されるものなのでしょうか。環境などの後天的な要因に左右される可能性はないのでしょうか。身長、アレルギー感受性、エピソード記憶、言語能力、学習能力など、様々な体質について考えてみましたが、いずれも様々な意見があがり、一つの回答を見出すことはできませんでした。

 

遺伝子情報を知りたいか、知りたくないか


 最新の遺伝子診断について学んだところで、「あなたは遺伝子診断を今行うか」について考えました。遺伝子情報から自分の弱みがわかることで、逆にそれを強みにしたいという意見や、治療不可能な病気発症のリスクなどについては早い段階で知りたくないという意見が挙がりました。

遺伝子情報だけで判断される社会の到来


 近い将来、遺伝子情報だけで他者から自分を判断される時代が来るかもしれません。はたして、人間の特徴のすべてを遺伝子が決めていると言い切れるのでしょうか。また、遺伝子診断が既に可能な現代において、人間の倫理観は追いついているのでしょうか。遺伝子情報をどのように扱うべきなのかという問題は、私たちが既に考えていなければならない事柄なのではないでしょうか。

所感


 今回の事前学習を通して、ヒトゲノムとは一体何なのか、遺伝子情報によってどのようなことが分かるのかということを改めて学ぶことができました。また、既に遺伝子解析用のキットが売られており、簡単に自分の遺伝子情報を知ることができる時代が到来しているということも驚きの一つでした。科学の進歩は想像以上に早く、私たちの倫理観はその早さに追いつけていないということを、身を持って感じることができた事前学習だったと思います。

 

 

 今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。

 

文責:北條日向子