2017年度 夏合宿

日本のこれから~半学半遊~


 9月3日から5日までの3日間、熱海の伊豆山研修センターで夏合宿が行われました。今回の夏合宿では、「日本のこれから」という大テーマのもと「半学半遊」を目標に、班課題として『方策立案』、個人課題として『仮説検証』の発表、レクリエーション等を行いました。

1日目


 熱海駅に集合し、マイクロバスで宿舎に向かいました。研修センターに着くと、早速研修室へと移動し、メンバーが夏休みを使って取り組んできた個人課題の発表を行いました。優秀賞として表彰されたものを以下に掲載します。

日本は憲法を改正し、自衛隊を戦力として保持するべきである:9期 高岡伶羽】

 現状分析として、①自衛隊は憲法第9条に違反する可能性が高いという憲法学者が過半数を占める②自衛隊を国民は必要としている(内閣府が平成27年1月に実施した世論調査より)という事実があります。自衛隊が違憲状態であることは、憲法学者並びに現内閣総理大臣の見解からわかるように自明です。そのため、憲法第9条に「自衛隊」の文言を追加する憲法改正がなされるべきであると考えました。しかしながら、あくまで自衛隊は国内の安全の確保の為、国防に必要 な最低限度の実力組織であり、その実力を超える戦力は必要ありません。従って、自衛隊を戦力として保持すべきではないと結論付けました。

【東京オリンピックの開催は日本社会にとってプラスである:8期 小嶋万里佳】

 日本では今後、少子高齢化の進行により経済成長の停滞が予想されます。そこで、東京オリンピックを開催することは未開発(※)であった観光業を促進すると考えられます。オリンピック開催に伴い、宿泊施設の増設、交通網や無線LANの整備が行われます。また、訪日外国人はアジア出身が多いですが、オリンピック開催を契機に旅行者の国籍の多様化が期待できます。これらの事実から、観光業の発展は投資に見合う効果が得られると考えられ、今後の経済成長を可能にするため、日本社会にとってプラスとなると考えられます。※外国人観光客数は世界22位であり、国際水準の数値には達していません。さらに、外国人観光客消費支出のGDP比も世界平均10%に対し、日本は0.5%と今後成長する余地があると言えます。

【プロスポーツチームの地方拠点化は日本社会にとってプラスである:7期 古川美紀子】

 現在、スポーツと景観・環境・文化など様々な地域資源を融合・活用することで、まちづくりや地域活性化につなげる取り組みが全国各地で進められています。サッカーや野球のメジャースポーツの地方拠点化が経済効果をもたらしていることは自明であるため、今回は「“マイナースポーツ”のプロスポーツチームの地方拠点化は日本社会にとってプラスである」という仮説を立て検証しました。仮説検証によれば、マイナースポーツに焦点を当てると、社会的効果は見られたものの、その経済効果は小さく、メジャースポーツほどの影響力は確認できませんでした。従って、プロスポーツチーム全体で見ても、一概に地方拠点化が日本社会にとってプラスであるとは言えません。しかし、プロスポーツチームがあることにより、地域の連帯感が向上すると考えられます。

2日目


 朝食後、研修室に集合し、各分野のミッションに対して「方策立案」を行う班課題の発表を行いました。4時間という限られた時間の中での準備・発表でしたが、趣向を凝らした方策が出揃い、白熱した議論が飛び交いました。以下に、各班の発表内容を掲載します。

【若者が積極的に政治意見を発信するための方策を考案せよ:齋藤班】

 齋藤班は、積極的に政治意見を発信するために「若者が主権者としての自覚を持つこと」が必要であると考えました。日本では、政治に関心がない若者は割合が諸外国に比べて高い現状があります。そこで、①投票率の向上②吟味の上での投票を目指すために、主権者教育の改善によって若いうちから政治活動への土台を作ることを提案しました。小学校では、政治に関連したディベートを行い、自らの意見を発信する力を身につけます。また、中学校では現職の政治家が講師として定期的に出張講義を行うことで、社会の授業で学ぶ政治の基礎知識に加えて、政治活動を身近に感じてもらいます。そして高校では、過去に実施された国政選挙等に基づいた模擬投票を行い、主権者意識や選挙スキルを身につけます。このように、年齢相応の能力に応じた段階的な主権者教育により、積極的に政治意見を発信するために「若者が主権者としての自覚を持つこと」が期待できます。

【教育格差問題を是正するための方策を考案せよ:古川班】

 古川班は、教育格差の原因として子供の貧困に焦点を当て、日本では相対的貧困(※)の割合が高いことを問題視しました。子供の貧困の問題点として、国レベルの視点では①税収減少や社会保障費増加による社会的負担②犯罪の増加を挙げました。子供レベルの視点では、①低学歴・低学力・低収入②保険料が払えないため保険加入率が低い③貧困の悪循環が断ち切れないという3点を挙げました。そこで、①高等学校卒業資格の取得義務化②大学進学支援の2つの方策を提案しました。この方策により、貧困子供の学歴を向上させ、将来働く際の収入を増加させることが期待されます。

※等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が全人口の中央値の半分未満の世帯員

【労働市場のミスマッチを解決するための方策を考案せよ:安藤班】

 安藤班は、労働市場のミスマッチを解決するにあたり、業種別の転職求人倍率がIT・通信業界5.49倍(2017年 7月現在)と他の業界に比べて高い点に焦点を当てました。問題解決にあたり、雇用の流動性の向上と能力と希望が一致していない人々の支援を目指します。そこで、方策として『Front Sensor』という学生と社会人のインターンを斡旋する会社の設立を掲げました。この方策により、働く側としては、採用前に実際に労働を体験できるため、労働者が離職することを防止し、就労に対するハードルを下げる効果が見込めます。また、企業側としては、実際に働く姿を見て、即戦力となる人材を獲得できます。このようなインターン制度により、①企業が自社イメージのために環境改善を行うことで社会全体の労働環境の改善②その結果としての経済効果が見込めるため、労働市場のミスマッチを解決できると検証しました。 

【持続的な経済成長を達成するための方策を考案せよ:小沢班】

 小沢班は、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する状況下において、持続的な経済成長を達成するため、①カジノを含むIR施設の建設・運営②プレミアムフライデーの改善を方策として挙げました。①に関しては、カジノ建設によって、外国人観光客の増加、雇用の拡大が見込めます。カジノ産業の世界市場規模はおよそ31兆円あるため、参入する価値があると考えした。また、②に関しては、プレミアムフライデーをプレミアムマンデーに変更し出勤時間を遅くすることで、月末金曜が忙しく15時退社が難しい労働者も休みを取りやすくなり、経済活動の活性化が期待できると考えました。

【日本の観光産業を活性化させるための方策を考案せよ:宮寺班】

 宮寺班は観光産業の活性化を旅行消費総額の増加と定義しました。「観光産業を活発化させる方法として、地方にサービスモデルを整備することが重要なのではないか?」と問題提起し、解決の方策として『デラノミクス3本の矢』を立案しました。第1の矢は、ロケツーリズムです。これは、地方公共団体が、該当地域の観光業の活発化に寄与すると認定したコンテンツの制作者にかかる所得税を肩代わりできるという制度です。第2の矢は、日本版DMO×オープンイノベーションです。これは、専門人材を募集し、観光庁認定のDMO法人に人材派遣をする企業に対して、法人税の優遇処置を施す制度です。第3本の矢は、Wi-Fiの整備です。政府は2.6億円にとどまっているWi-Fi整備の予算を拡大し、全国的にWi-Fiを整備します。これにより、国内の旅行をより快適にすることに加え、SNSでの観光客による観光スポットの発信が期待できます。これらの方策により、国内の若者旅行者や訪日外国人を増やし、旅行消費総額を増加させることが期待されます。

【ICTを活用して医療福祉問題を解決する方策を考案せよ:今西班】

 今西班は、地域ごとに必要医師数に大きく差があることを問題提起し、解決策としてICT(Information and Communication Technologyの略で、コンピュータやインターネットに関連する情報通信技術のこと)を活用した遠隔診察を立案しました。この方策では、育児休暇中の女医と遠隔診察を用いた治療を必要とする患者を、ICTを用いてマッチングさせます。これによって、医療サービスの偏在を解決するとともに、育児休暇中の女医が当直や時間外勤務の免除、短時間勤務も可能になると考えられます。

【食料自給率100%を達成するための方策を考案せよ:日後班】

 日後班は、生産額ベース総合食料自給率93%を58年後までに達成するという目標を設定しました。国土面積の1/3を農地にしない限り、食料自給率100%を達成することは難しいと分析しました。現在の日本においては、食料供給のほとんどを輸入に頼り、他国の経済や天候によって安定供給が損なわれる恐れがあることが課題となっています。そこで、食品購入の際に、マイナンバーカードを用いて1年間に購入した国産品の割合を記録し、国産品の割合に応じて確定申告の際に税還付する(所得税を下げる)という方策を立案しました。これにより、国産品の消費を増加させ、食料自給率を向上させることが期待されます。

【東京一極集中を解決するための方策を考案せよ:由本班】

 由本班は、東京一極集中解決のために、大阪にも東京と同等の経済的機能を持たせることにより、東京と大阪の二極集中を行うという方策を立案しました。東京一極集中の背景としては、東京に企業と人が集中するためにサービスが充実し、サービスの充実によってさらに人が集中するという悪循環が挙げられます。そこで、①大阪に大企業を誘致する②大阪版シリコンバレーを作るという方策を提案しました。方策の効果として、①災害の経済的損失の軽減②持続的な大阪への人の移動が見込まれることを挙げました。

3日目


 とうとう夏合宿も最終日となりました。二日間個人課題や班課題に真剣に取り組んだ後は、夏休みを締めくくるFR恒例の海企画!!昨年は雨で海企画ができませんでしたが、今年は無事快晴でした!熱海の海で、各期の垣根を越えて笑いの絶えない楽しい一時を過ごすことができました。 

 三日間の個人課題や班課題、レクリエーションを通して、「よく学び、よく遊ぶ」半学半遊という夏合宿のテーマを達成できたことと思います。普段は会うことのできない期が顔を合わせ、心を通わせることで、後期への弾みをつけることができました。

 

文責 岡根歩美