2019年度 第2回事前学習

変わりつつある介護社会       ~介護者になるとは~


 5月24日、日吉キャンパスにおいて第2回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「変わりつつある介護社会」です。今回は須賀田・土方によるファシリテーション形式で、介護社会の現状や基礎知識を共有し、考察しました。以下はその内容です。

介護問題とは?


 まず、自分の周囲に介護を必要としている人がいるかを、イエスノーの形式でサークル員に尋ねました。イエス側では自分の祖父母の食事の手伝いやベッドへ運ぶ手伝いをしたという体験談が挙がり、ノー側では「(漠然と)介護をすることは、介護者の人手不足の影響や、精神的に負担が大きいため大変そうだ」というイメージを持っているという意見が大半でした。

介護問題はなぜ発生する?


 そこで、今回は介護難民に焦点を当て、介護難民はなぜ発生するのか、またそれを解決する解決策について議論しあいました。前者については、「介護従事者の不足」「老人ホーム等の場所不足」「被介護者の介護に対する金銭不足」「要介護者の増加」「核家族化」「平均寿命と健康寿命のギャップ」などが挙がりました。また、後者については、「介護従事者の待遇を向上させる事によって、介護者側の絶対数増加を促進する」「要介護者の海外移住を促進することで、国内の介護労働者を増やす必要がなくなる」という解決策が挙がりました。

 実際、介護サービスに従事する従業員の各施設における過不足状況についての調査では、全体における66.6%の施設が不足感を感じている状況であり(1)、独立行政法人福祉医療機構経営サポートセンターの調査では、特別養護老人ホームの入所待機者数は約30万人、1施設あたりの平均待機者数は117.3人、定員1名あたりの待機者数は1.75人(2)という状況であることが明らかになっています。よって介護職の人材不足や介護施設の不足が顕著であることがわかります。

 

(1)『平成29年度 「介護労働実態調査」の結果 ~介護人材の不足感は4年連続増加~』公益財団法人 介護労働安定センター、2018年8月3日(最終閲覧日:2019年6月5日)

URL:http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf

 

(2)『平成 29 年度 特別養護老人ホームの入所状況に関する調査』独立行政法人福祉医療機構経営サポートセンター リサーチグループ、2018年3月(最終閲覧日:2019年6月5日)

URL:https://www.wam.go.jp/hp/Portals/0/docs/gyoumu/keiei/pdf/2017/rr17020_data.pdf

在宅介護の現状や問題


 こういった現状から、在宅介護を選択する人が増えています。要介護者と暮らす家庭のうち、在宅介護をしている世帯数はサービスを受けている世帯数の約4倍いるといいます。また、老々介護や認々介護といった介護形態による介護者・被介護者の共倒れの懸念や、家族などを介護するために離職した人が自身の人生における自己実現を犠牲にせざるを得ない、精神的なストレスの増加に繋がってしまう、などの課題が現れています。

介護と学生生活を天秤にかけると


 そこで、サークル員に「今、あなたの身近な人が要介護者になったとします。学生をやめて介護に回りますか?」という質問をしました。多くの人が学生をやめないと回答しましたが、少数ながら学生をやめるという回答もありました。

 次に、各自の「学生をやめる・やめない」理由をブラッシュアップするために、学生をやめる側・やめない側に分かれ、各テーブルで議論を行いました。そして、各テーブルでの議論を終えた後、「学生をやめる・やめない」という理由を即興ディベート形式で議論しました。学生をやめる側からは「学生をやめた場合自己実現の可能性が下がる可能性がある」、「学生や社会人としての復帰の見通しがないのだから、易々と学生をやめるべきではない」という意見、学生をやめない側からは「介護をせずに亡くなってしまったら後悔が絶えないであろう」、「めどが立つまでの休学なら現実的ではないか」といった意見が出ました。

まとめ


 議論で出たように、介護者になるという決断は容易ではありません。そのため、日頃から大切な人が要介護者となった時どう対応するべきか想定しておくべきだという結論になりました。

所感


 多くの社会問題において、このような結論に至りがちなのですが、介護問題は一筋縄ではいかない、というのが感想でした。もちろん、道徳上年上の方や親を大切にすべきことはわかってはいますが、自己実現を達成したいという思いや自分の精神的ストレスについてはどうしても拭えないものがあります。

 今回の事前学習では、我々サークル員自身にも介護問題が密接に関係してくるのだということを学べ、当事者意識を持つことができたと思います。今後2週間を通じて介護問題の現状の分析や解決策の模索を続け、リフレクション後もこの問題を考えられるようにすることで、我々が介護の主体となった際に活用していきたいです。

文責:松成 拓