2012年度 第8回リフレクション

消費税増税の是非


 今年度の春合宿では、春合宿にお招きした講師の方々との勉強会を通して学びを深めてきたテーマについて、ディベートを実施しました。


論題「消費税を増税すべきか否か」

肯定側立論


『消費税を2015年までに8%に引き上げた上、増税による需要低迷が極めて少ないと考えられる項目について2020年に15%に引き上げる。さらに、状況に応じて適切に生活保護が適用される収入の最低基準を引き上げる。』


1.消費税率引き上げによって投資家からの信頼が回復し、株価が上昇することで景気が回復する。

2.消費税率引き上げによって安定した財源の確保を実現し、財源の圧迫を緩和することで、社会保障や公的サービス維持の足がかりとする。

3.消費税率引き上げは経済と財政という2つの課題を一度に達成することができ、国会でも通りやすく、実現可能性が高い。


否定側立論


1.消費税率の引き上げによって得られる税収はほかの税でまかなうことができ、消費税は税収を増やす手段として適切でない。

2.消費税は所得に関係なく税を課すため、低所得者ほど負担が大きくなる逆進的な税であり、格差を拡大させ、所得の再分配という税本来の機能を果たしていない。

3.消費に直結する消費税を上げると、国民の消費は冷え込み企業の業績に深刻な影響を与え、さらにそれが賃金を低下させるという悪循環に陥り、さらに景気が悪化する。


否定側第一反駁


① 1について、財政再建によって景気回復するのであれば、税収引き上げの手段は他にもあるのではないか。

② 1について、2014年〜2015年の予想成長率は低く、経済回復は期待されない。

③ 1について、消費税増税が株価低下、また税収減少につながったという過去のデータがある。

④ 2について、消費税増税分を社会保障費にあてるのなら、これから高齢化が進むにつれて加速度的に増えて行くと予想される社会保障費を補えるのか。

⑤ 2について、消費税も50%近く脱税している人がいるというデータがある。

⑥ 3について、内閣支持率の高さと景気安定の関係性は薄いと思われる。


肯定側第一反駁


Ⅰ.1について、既に高い所得税率をこれ以上上げるのは非現実的である。

II. ②について、否定側の予想成長率のデータは古く、安倍政権に変わった現在参考にできない。また、内閣支持率は低下しない可能性もあり、現時点では上昇している。

III.③について、消費税増税の結果全体の税収が減少したのは、所得税、法人税も下げたからではないのか。

IV. ④について、社会保障費を全て消費税増税分で補うとは言っていない。消費税は社会保障を補う財源として重要である。

Ⅴ.⑤について、消費税脱税のデータは否定側に別のものがあり、正しいと言いがたい。


否定側第二反駁


1.Ⅱについて、データが古いという指摘に対し、過去に起こったことは今後もそうなり得るという意味で参照した。

2.Ⅱについて、内閣支持率は今後低下する可能性も高いのではないか。

3.Ⅲについて、所得税と法人税を下げなければならなかったのは消費税増税の結果景気が冷え込んだことが原因である。

4.Ⅳについて、立論や主張からは社会保障が大事という印象を受けるが、消費税増税の目的は結局何か。


肯定側第二反駁


・ ⅱについて、内閣支持率は今後上昇、または維持の可能性もあり一概に低下するとは言えない

・ⅲについて、肯定側のプランとしては景気の回復を前提としているため、所得税、法人税も下げないといけなくなるということはプランと一致しない。

・ ⅳについて、社会保障の財源とすることも増税の目的ではあるが、全てではない。


講評


・ 全体的に話すスピードが速く、審判にわかりやすく伝えるということが徹底できていない。

・ 途中からデータや政権についての議論が多くなってしまい。本題とずれてしまいがいであった。

・ 質疑で反駁のように見受けられる発言があったため注意が必要である。

・ 肯定側は「内因性」「重要性」「解決性」の3要素に基づいてそれぞれの立論を作成したが、今回は一つ一つの立論をこの3要素から評価する方式であったため点数は低くなってしまった。


文責:山里晴香