2014年度 第7回フィールドワーク

@ヤマトグループ羽田クロノゲート


 2月13日、ヤマトグループ羽田クロノゲートにて第7回フィールドワークを行いました。

 

 今回のフィールドワークは、定例会で扱ったテーマ「ものづくりとイノベーション」と関連させ、製造業の流通に欠かすことのできない巨大物流ターミナルを訪問し、宅配便を始とした物流の仕組みや最先端の取り組みを体験的に学習することを目的として行われました。

 

 寒空の下、京急線天空橋駅からしばらく歩くと、周囲の建物から一線を画したモダンな建物、羽田クロノゲートが現れます。見学時間が夜だったということもあり、青色にライトアップされた建物は幻想的な雰囲気を漂わせていました。


100THANKS ―ヤマトグループ100年の歴史―


 羽田クロノゲートに入場し受付を済ますと、まず始めにエントランスホールの展示品を見学しました。ホールには「100THANKS」と題された展示品があり、2019年11月29日に100周年を迎えるヤマトグループを記念して、ヤマトグループと宅急便のこれまでの歴史が数多くのキューブに記されていました。

 

 ヤマト運輸の歴史は、1919年までさかのぼることができます。現在の銀座三丁目にて創業したヤマト運輸は、1929年東京小田原間1日2回を往復する定期便を開始し、1936年には路線事業の名称を大和便として関東にネットワークを拡大、その翌年には東京一円の路線網を完成しました。年表に沿ってたくさんのキューブが並べられているようすを一見するだけで、宅急便が時代の流れとともに柔軟に変遷してきたことが感じられました。

 

見学者ホール ―宅急便の過去、現在、未来―


 見学コースは、ヤマトグループの来歴、サービスについてのムービーから始まりました。

 

 羽田クロノゲートは、2013年9月に完成し、10月に創業した日本最大級の物流ターミナルです。その立地を活かし、陸・海・空3つのスピードネットワーク機能と高度な付加価値機能を一体化したサービスを展開しています。「クロノゲート」という名前は、ギリシャ神話の時間の神〈クロノス〉と、国内と海外をつなぐ〈ゲートウェイ〉に由来しています。

 

 また、ヤマト運輸は個人用の宅急便に強みを持つことで有名です。1976年関東エリアから始まった宅急便は5年後には全国の都市部をつなぎ、1990年、全国の99,5%にサービスエリアを拡大、1997年に小笠原諸島の宅急便取り扱いを開始し、全国ネットワークを形成しました。その他にもスキー宅急便、ゴルフ宅急便、クール宅急便など、顧客のニーズに寄り添った多くのサービスが知られています。近年では、こういった個人向けの宅急便に留まることなく、ヤマトグループは新たな価値の実現を目指し、運送に加えて洗浄やメンテナンス、修理、印刷等のサービスを行うバリューネットワーキング構想を推進しています。

 

 ムービーの中でも一際興味深かったのは荷物の運送の仕組みでした。普段何気なく使用する宅急便ですが、荷物がどのような経路をたどって遠く離れた地域に届けられるのか、知っている人は少ないのではないでしょうか。荷物はまず宅急便センターという町の直営店に集められ、その後、全国70箇所にある仕分けターミナルであるベースに運ばれます。ベースで行き先ごとに仕分けられた荷物はお届け先のベースにトラックで運ばれ、翌朝、宅急便センターを経由し、セールスドライバーによって顧客の手へ届けられるのです。


見学者コリドー ―物流の現場を体感―


 ムービー鑑賞を終えると、スタッフの方のガイドに従って流通センターの見学が始まります。羽田クロノゲートには物流棟と事務棟、地域貢献棟の3エリアがありますが、今回は羽田クロノゲートの心臓部ともいえる物流棟を見学しました。

 

 見学者コリドーに入ると、まず私たちの目に飛び込んでくるのは、大量の荷物を高速で運ぶスパイラルコンベアです。スタッフの方から荷物の仕分け作業に関する説明を聞きながら、実際の荷物が目の前を流れていくようすを空中回廊から見学しました。宅急便センターから到着した荷物はスキャナーを通過し、そこで荷物に貼ってあるお届け先の記されたバーコードが読み取られます。そしてクロスベルトソーターに合流した荷物は、全国70箇所にも上る荷物の行き先別に仕分けられていきます。この一連の流れが目にも止まらぬ速さで、かつ正確に行われている光景に、見学者は大興奮のようすでした。

 

 ヤマトグループのすべての機能が集結する羽田クロノゲートは、「速く、正確に届けるための仕組み」だけでなく、多彩な付加価値機能を持った施設であることが特徴です。見学コースで実際に見学することができる荷物の仕分け作業以外にも、「洗浄」「印刷」「修理」「メンテナンス」など、上層階では多種多様な業務が行われています。見学者コリドーの随所に設置されているエレベーターを模したゲートから、それらの業務を行っている上層階のようすを疑似体験することができました。


集中管理室 ―クロノゲートの頭脳―


 次に案内されたのは集中管理室です。ここでは多くのモニターでクロスベルトソーターやスパイラルコンベアの稼動状態、運送トラックの状況を管理しています。ICカードや生態認証で万全のセキュリティが完備されており、まさに羽田クロノゲートの頭脳と呼ぶにふさわしい施設であると感じました。


展示ホール ―物流の生み出す新しい価値とは―


 見学コースの最後に訪れた展示ホールでは、最新鋭のプロジェクションマッピングとともに、ヤマトグループが今後提供するサービスについて学びました。国際クール宅急便、修理品の引取り、修理、お届けをすばやく行うメンテナンスサポートサービス、ローナー支援サービスなど、私たちの暮らしをより豊かにするサービスが新たに生み出されていることを知り、ヤマトグループの飽くなき追求心を感じました。展示ホールの周囲の壁の引出しに隠された展示、集荷の疑似体験を通してお土産をもらえるゲーム等、最後まで見学者を楽しませる工夫にあふれた見学コースで、学びと楽しさに満ちた90分に参加者は大満足のようでした。

 

 今回のフィールドワークで訪れた羽田クロノゲートでは、物流はもちろん、印刷、修理、洗浄など様々な分野が融合した業務が行われていました。業種の垣根を越えたサービスを提供することで新たな価値を生み出すヤマトグループの姿勢に、これからの新しい産業のあり方が見出せるのではないかと感じました。

 

文責:矢部麻里菜