2010年度 第3回勉強会

こどもに笑顔と安心を

上野和子氏(NPO法人ひろしまチャイルドライン子どもステーション理事長)


 今回はNPO法人ひろしまチャイルドライン子どもステーション理事長・上野和子氏をお迎えし、「日本のこれから~子どもに笑顔と安心を!~」と題した講演会が5月28日、慶應義塾大学日吉キャンパスにて行われた。 

 全国にも広く浸透してきたチャイルドライン、現在東京だけでも12団体を抱えるNPO法人である。チャイルドラインは、18歳までの子どもがかけられる専用電話で、フリーダイルで子どもの話に耳を傾け、子どもと対等に向き合った活動をしている。お互いに名乗りあわないことを原則としていることが特徴的だ。 

 

 実際にさまざまな事情を抱えるこどもたちから生の声を耳にしてきた上野氏はチャイルドラインの概要をはじめとして、その存在意義、実際に受けた電話の例、こどもと社会のあり方、外国における"子ども"についてなどを語った。 

 

 子どもの権利条約を踏まえた話の中で上野氏はこう語る。「現 代は子どもの権利を認めたくない大人がたくさんいる。大人がいてこどもがいる。お互いに信じあって、生きやすい環境を創るパートナーとして尊重しあわなけ ればならない。」とし、子どもを大人と同じ"ひとりの人間"として接しない、それが現代特有ともいえる"虐待"や"家庭内殺人"につながるのだ。」と警鐘 をならす。

 

 後半質疑応答の時間には、講演会に参加した生徒たちからさまざまな質問がとびかった。経営について、電話の受け手側のケアについて、こどもたちの電話から得られる背景...さまざまな視点からそれぞれの答えをいただいた。  

 

 そして上野氏は「チャイルドラインはこれからもこどもたちの深刻な声を継続して聞き続け見守っていく。子どもは家庭の中だけで育てていくものではないとい う認識の下、大人・こどもを問わずそれぞれが大事にされる社会にあるべきだ。これからも政府に代わる"新しい公共性"となりうる活動を進めていく。」と強 い信念を示した。

 

 「子どもの笑顔と安心は、大人の笑顔と安心だ。」

非常に簡潔ではあるが理解するには非常に深いこの言葉。われわれ大人たちがこの言葉の真の意味を見出すことができたとき、子どもたちにとって今よりもより良い社会となっていることは間違いない。

 

<経歴>

上野和子氏

2000年3月 ひろしまチャイルドライン開設

2001年6月~ ひろしまチャイルドライン代表

2002年4月~ NPO法人チャイルドライン支援センター理事

2003年6月~ NPO法人ひろしまチャイルドライン子どもステーション理事長

2005年11月~ 「チャイルドライン全国フォーラムin広島」開催

2007年10月~ 「広島市子どもの権利に関する条例(仮称)について意見を聴く会」委員

2008年12月~ 民生委員・児童委員。主任児童委員

2010年1月~ 広島市子ども施策検証市民会議代表

 子どもの「心の居場所」創りを目指して、2000年3月から「ひろしまチャイルドライン」を開設し、「子どもの声」から「大人のありかたについて考える」啓発活動を行っている。支援センターの理事としても、他県のチャイルドライン開設支援、研修会講師として多忙な日々を過ごす。