2014年度 第11回勉強会

地方創生

木村俊昭氏(東京農業大学教授)

田中大輔氏(中野区区長)


 2月6日、春合宿にて「地方創生」というテーマのもと木村俊昭氏、田中大輔氏をお招きして勉強会を行いました。    

地元から世界に発信するものづくり


 まずは、木村俊昭氏のお話からです。木村氏は1984年に小樽市に入庁され産業振興課長、企画政策室主幹、産業港湾部副参事を務められるなどの活動を行われました。学生時代に、遠軽町には役場しかないから勉強して遠軽を出ろと言われたことを契機に地元の再生の必要性を実感し、遠軽で街づくりをするという目標を立てられました。産業歴史文化を掘り起こし研きをかけて地元から世界に発信するまちづくりをすること、未来を担う子供たちに地域ぐるみで愛着心を持たせる人づくりをすることを二大目標として掲げられており、全体最適、価値共創等の思考で、年間120カ所程から依頼を受けて、実学・現場重視の視点で地域活性に全力を尽くしていらっしゃいます。    

中野区の実情

 次に田中大輔氏のお話です。田中氏は中野区の区長を務められており、中野区でやらなければならないこととして少子高齢化対策を挙げられました。そして「高齢者の数が増えているのではなく長寿化しているのであり、100歳以上の方も中野区には現在107人もおり、2040年、2050年には高齢者人口が40%になると言われている。その一方で就労年齢人口は40%を下回り、子供の数はさらに下回る。地方の高齢化はもっと比率が高まり、高齢者の方がだんだんと住みづらい環境になり、日本の国土の30%が無居住地域になるのではないかと言われている」と話されました。

 また、産業について述べられました。自動車工業は飽和状態であり、その結果鉄工業も飽和状態になっている。人口も今後増えないから住宅数も飽和状態である。人口の減少を止められない上に外国人労働者は日本にあまり来ない。それらの結果として日本の産業、経済は低迷してしまう。そこで年齢や性別で輪切りするのをやめて全員が働けるような環境づくりをすること、また大学卒業後就労できていない人を無くし、全員参加型の社会を目指すことが必要であると述べられました。

質疑応答


 最後に質疑応答です。「新しいことをやったことのない地方の人の心を動かし前向きにさせるにはどうすればよいのでしょうか」という質問に対して、木村氏は「色々な人がいるということを考慮に入れて数値化して分かりやすく伝える。難しい顔をしない。この人と一緒だと楽しそうと思わせること。「広聴」を重視し、反対している人を説得するのではなく、納得してもらい、理解を得ながら、中立の人を引き込むためには本気、情熱が必要である」とお答えになりました。

 次に「今回、地方創生の活動をなさる木村氏と中野区の区長でいらっしゃる田中氏が共にいらっしゃったが地方と東京をつなぐ関係とはどのようなものなのか」という質問に対して、田中氏は「東京と地方をつなぐことで高齢者支援につながる。現在の取り組みとしては、里町連携自治体での交流自治体の形成が挙げられる。例えば都市で高齢者付き住宅を作るとお金がかかるが、地方に移り住めばお金があまりかからない。縁もゆかりもない地方に行くとなると高齢者も不安だが、あらかじめ自治体どうしが連携しておくことで、転居する高齢者の負担も軽減され、高齢者の負担も軽減される。このようにあらかじめ連携した関係を持つことで高齢化問題に対応することが可能となる」とお話になりました。

所感


 私は地方創生の手段として経済活動の移転を中心に考えていましたが、地方の強みを生かした高齢化対策の活動などが行われていることを知り、これこそが今後の日本における少子高齢化問題の支えとなると考えました。


                                        文責 坂本真都里