2013年度 第6回勉強会

日本の司法

尾家康介氏(横浜弁護士会大木法律事務所所属)


 11月1日、日吉キャンパスにて「日本の司法」というテーマのもと、横浜弁護士会大木法律事務所所属の尾家康介氏にご講演いただきました。


弁護士の仕事


 始めに弁護士の実態についてお話ししていただいた。弁護士は全国に約3万人おり、そのほとんどが事務所に所属している。事務所ごとに専門に分かれていることも多いそうだ。ひとえに弁護士とは言え、ボス弁やイソ弁、ノキ弁など様々な種類があり、法曹界の就職難の影響もあり、従来とは違うタイプの弁護士が増えていると尾家さんはおっしゃった。 弁護士の実態についてお話しいただいた後、事前にお伝えしたテーマについてお話ししてくださった。


なぜ国民が起こす訴状の減少が続くのか


 私たちの事前学習では訴訟数が年々減少しているという結果を得た。 この原因は何なのか。尾家さんは実に単純明快な回答をくださった。民事事件については「過払事件が減っているから」、刑事事件については「犯罪数自体が減っているから」である。 刑事裁判に関しては犯罪数が減少しており、少年裁判に関してはそもそもの子供の数が減少している。これでは訴訟数が減少するのも当然である。


なぜ紛争の法的手段を用いた解決を促進するのか


 尾家さんは法治国家という視点から回答を下さった。 日本は法治国家であり、個人間の紛争を解決する最終的な方法は法律で決められている。つまり、個人間の紛争の最終的な解決法が法律で決められている以上、法的解決は最終手段であり、それ以上の紛争を生むことがないのである。 決して裁判による解決が奨励されている訳ではないが、法治国家の国民として法を前提として解決することが最も合理的であるといえるだろう。


日本の司法制度と今後の展望


 尾家さんはこの点に関しても法治国家という視点から回答を下さった。 日本は法治国家であり、また近年裁判員制度も広く利用されている。このような国の国民である以上誰もが裁判の当事者になる可能性があると言えるだろう。 このような現状をふまえた上で法についてより見識を深めていくことが大切であると述べられた。

日本がアメリカのような訴訟になることについて


 アメリカが訴訟社会であるのは周知の事実であろう。では日本もそうであるべきなのか。 アメリカが訴訟社会であり得るのはそのより簡略化された司法アクセスによるであろう。その点に関しては日本も見習うべきである。 しかしあくまでも目的は訴訟数を増やすことではなく、そのことを忘れてはいけないと尾家さんは述べられた。

所感


 全体を通して尾家さんはこの日本が法治国家であるということを強調されていた。 私たちは“法”という土台のもとに生活しており、“法”という土台のもとに社会が形成されている。 尾家さんは最後に、そのことを意識した上で法に関して見識を深め、社会に羽ばたいてほしいと激励の言葉を下さった。 今回、「日本の司法」というテーマのもとお話をいただいたが、“法”は身の回りのどこにでも潜んでいるものであり、だからこそ理解を深めることが必要であると改めて感じた。


 今回ご講演いただきました尾家康介様、ありがとうございました。


 文責:松本昌大