2014年度 第2回事前学習

安全保障と憲法9条


 5月23日、日吉キャンパスにて第二回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「安全保障と憲法9条」です。 

 「安全保障と憲法9条」について、私たちは日本の理想とする社会を「堅牢な安全保障体制が実現される社会」と設定し、日本はこれからどうあるべきかを考えました。

 今回は、2年生の宮村、岸本によるファシリテーション形式で「安全保障と憲法9条」について学びました。以下はその内容です。


安全保障とは


 安全保障とは、「国家の独立や利益、国民の生存などを他国の脅威から守り、安全を保障すること」を指します。

 このうち他国の脅威として、尖閣諸島や竹島、北方領土問題といった「国土への脅威」、そして北朝鮮による拉致問題や、多くの邦人犠牲者を出したアルジェリア人質事件などの「国民への脅威」などが例として挙げられます。


何を守るのか


 他国の脅威から守るべきものとして、まず考えられるのが資源です。陸地面積の小ささとは対照的に、日本の海洋面積はEEZ(排他的経済水域)も含めると世界第6位に相当します。域内に含まれる水産資源および鉱物エネルギー資源を考えると、海洋大国「日本」は巨大な資源・利益を保有している、と言えます。

 また、テロ事件や戦争の被害から国民の安全を守ることもまた重要です。


日本とは


 ここで、守るべき対象を明らかにするために、「日本のアイデンティティは何に由来するのか」を全員で話し合いました。その結果、

・言語

・歴史背景

・人

・技術

・皇室

 といった意見が挙げられました。

 その後、この「何が国家を構成するのか」という問いに対する一つの解答として、「領域・人民・主権」を国家の三要素とするイェリネックの定説が紹介されました。

このとき、安全保障において守るべき対象は「国土の利益・国民の安全・独立の保障」の三つに大別されます。


現行の安全保障体制の問題点


 では、これらをどう守ればいいのでしょうか。日本の安全保障手段として第一に考えられるのは自衛隊や、その運営にあたっている防衛省です。また、米国の軍事力を背景とした日米安全保障体制や、集団的自衛権もこれに該当します。

 しかし、日本の安全保障はグレーゾーンだらけ、と言わざるを得ません。「自衛隊は軍隊なのか」「戦争が発生したらどう自衛するのか」「そもそも日本はいま平和なのか」という問題に対しては、曖昧な主張が横行しているのが現状です。

 

 この状況をふまえて、「日本の安全保障にはどのような問題点があるか」について、グループディスカッションを行いました。

・非核三原則を唱えながらもアメリカの核の傘に庇護されている、という矛盾

・アメリカに依存した安全保障

・憲法で軍隊を否定しつつも自衛隊を保有

・憲法解釈論争に阻まれるため、自衛隊の行動が制限されている

 このような意見が出ました。


憲法改正議論


 このような事態を背景に、今日では憲法改正議論が注目を集めています。先に述べたグレーゾーンの撤廃や、自衛隊の国防軍化が真剣に議論される根底には、自国の利益を防衛できていない現状に対する危機意識があります。

 改憲議論のなかでも特に焦点となっているのは「9条の是非」「自衛隊と軍隊の違い」の二つで、戦争放棄を謳う平和憲法や、交戦権を持たず海外派兵もできない自衛隊に、安全保障上の効力があるのか否かが問われています。

 

 最後に、「日本の安全・平和に軍隊は必要なのか」を全員で話しあいました。

・日本の少ない軍事費では軍隊を強力化できないため、軍隊の保有は無意味

・自衛できる力を持つために、現行の自衛隊を増強することは必要。ただし、海外派兵できるほどの増強は不必要

・現在、国際法を恣意的に解釈して交戦を行う国家が存在する。このような状況で軍隊を撤廃するには、解釈の余地のない国際法を制定することが重要。

 といった意見が出されました。


総括


 終戦後の憲法制定や自衛隊の成立から半世紀以上の月日が経ち、国家間のパワーバランスや戦争のありかたが大きく変動した状況で、今一度、日本の安全保障の新たな局面に向きあうことの重要性を感じました。

 

 今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。


 そして次回は6月6日、「日本は海外派兵や交戦権を認めるべきか」をテーマとしたディベートを行います。

 

文責:東恩納 麻州