2015年度 第5回勉強会

再生可能エネルギーと持続可能社会

滝澤誠氏(グリーン・サーマル株式会社代表取締役社長)


 10月9日、日吉キャンパスにて「再生可能エネルギーと持続可能社会」というテーマのもと、グリーン・サーマル株式会社の代表取締役社長、滝澤誠氏をお招きし、勉強会を行いました。

 

略歴


 千葉・千倉出身。大学卒業後、サラリーマンとして、しばらく勤務した後、バイオマス発電の運営に関わる。その後、平成21年に林業経営者と協同でグリーン・サーマル株式会社を設立する。

会社の概要


 グリーン・サーマル社では、「山林未使用材」を燃料としたバイオマス発電の普及を目指されています。滝澤氏は林業経営者と協同し、燃料の収集体制・加工等に独自のノウハウを生かされています。そして、5000kw級のバイオマスシステムを標準モデルとして構築し、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用し、国内普及を目指されています。

※5000kwの能力で、一般家庭約1万世帯・約3万人の使用電力をまかなえます。

日本の森林・林業の現状


 かつて林業はとても採算性が良く、戦後日本においては、全国で植林が行われていました。しかし、高度経済成長期の1955年頃より、海外からの木材の輸入が始まったことにより、木材価格が下落し、日本の林業は打撃を受け始めました。そして、1970年代初頭には、変動為替相場制に移行したことにより円高が進行し、輸入量が増加しました。さらに、1986年~1994年のウルグアイ・ラウンドでは木材の関税を撤廃する方向で、条約が締結されました。そして今日では、日本の年間木材需要の約75%までもが外国材で占められています。

 現在の林業は賃金が低いため、林業経営者の意欲は低下し、高齢化や後継者不足が著しくなっています。そのため、本来手入れが適切に行われるべき「人工林」が放置され、荒廃してしまっています。具体的には、植林時に密に植えられた状態のままで放置されているため、それぞれの木に十分な光が当たらず、木の幹が細くなっています。本来であれば伐採されるべき年数が経っている木は、光合成の能力が低下し、CO2の吸収量が著しく減少しています。さらに、災害時には流木となってダム等に流れ、2次災害の原因にもなっています。

電力の自由化


 平成12年3月まで、電力は電力会社が独占して供給を行っていました。そして、総括原価方式という高コスト体質の影響で、日本の電気は海外よりも割高であり、製造業の競争力は低下したため、電力供給構造の改善が求められてきました。そして、段階的に電力の自由化が行われていき、平成28年4月からは、コンビニ・事業所等や家庭を含む全ての電力が自由化されます。

バイオマス発電の重要性 その1 安定・早期供給


 水力発電・地熱発電は、建設から稼働までが10年以上かかり、また風力発電や太陽光発電は自然エネルギーに頼るため、安定供給することが困難です。その一方、バイオマス発電は建設から稼働までの期間が2~3年と極めて短く、さらに安定的に電力を供給することが可能です。

その2 林業の拡大・山林海洋の保全


 バイオマス発電を利用することにより、従来利用されていなかった木材が利用されることになります。これまでは、伐採した木材の半分程度しか利用されてきていませんでしたが、バイオマス発電を行うことにより、木材の利用量は必然的に増加することになります。さらに、高齢化した人工林を伐採し、新しい苗を植えることにより、森が再生し、周辺の海域は栄養豊かになります。

その3 地方創生


 この事業で恩恵を受けるのは林業のみではありません。発電所自体の運営、燃料の集荷、運送に関わる新たな雇用が発生し、地方の活性化につながります。また、間伐材を利用した林地・林道の整備、森林・産業観光の振興の効果もあると考えられます。

課題


 事業費がまだ割高であることが挙げられます。バイオマス発電所は5000kw級で約25億円の事業費を要し、kw当りでは約50万円ということになります。これは、一般的な火力発電所の2倍の額だそうです。現在は、発電効率の向上、設備の簡素化、自然エネルギーの効果的な利用技術の導入等の多角的な観点から、コストダウンを図ろうとされています。また、林業就労人口はあまり伸びていないため、引き続き林業に携わろうと考える層を拡大する努力を続ける必要があります。さらに、近年まで、電力は電力会社が独占する状況であったため、発電所から送電線を新たに敷設する作業には、まだ時間がかかると考えられています。

周りのニーズにどう応えるか


 グリーン・サーマル株式会社を立ち上げた際は、資本金50万円、社員2名であったそうです。そして、ある省庁主催のコンペティションにおいて、グリーン・サーマル社の活動計画内容が評価され、実行に向けて歩み始めた頃、役人の方に「あなたの会社の活動計画は本当に実現可能なものなのか」と問われたそうです。それに対し、滝澤氏は「いつまでに返事を出せば良いですか」と尋ねられたそうですが、相手は「1時間以内に返事を出すように」と答えられたそうです。滝澤氏は「これは「はい」というしかない」と感じ、その場で活動計画の実現を約束されました。滝澤氏は、計画が本当に実現できるのか不安もあったそうですが、最終的には周りの人たちからの協力もあり、計画を無事実現させることができました。この経験から滝澤氏は「自分ひとりの力には限界がある。自分が何をしたいのかにこだわりを持ちすぎてはいけない。周囲のニーズにどう応えるのかを考え人に協力してもらえる人になることが大事」と話されました。

所感


 日本における林業の衰退の問題は、知識では知っていましたが、それに対する解決策がどのようなものか考えてもいませんでした。東日本大震災後、原子力発電所が順次停止したことにより、現在では、その分の電力を火力発電で補っています。そのため、化石燃料の輸入が急増し、日本の貿易赤字の大きな要因となっています。私は、「山林未利用材」によるバイオマス発電は、その悪循環を止め、さらに林業の活性化につながる救世主になると考えました。さらに、今回の講演会は、原子力発電所の必要性について改めて考えてみる契機となりました。



文責 後藤拓野