2015年度 第2回事前学習

若者の政治参画と選挙制度


 5月15日、日吉キャンパスにて第2回事前学習が行われました。これから4週間かけて学ぶテーマは「若者の政治参画と選挙制度」です。今回は宮田と中井によるファシリテーション形式で、本テーマについて日本の現状と今後の展望を考察しました。

 

選挙に行かない若者


 平成26年12月に行われた第47回衆議院議員総選挙の若者(20~39歳)の投票率は32.58%に留まり、前回(平成24年12月)の選挙から約5%低下しています。つまり、7割近くの若者が選挙に行っていないということになります。

投票率が高い=良いこと


 ファシリテーターは、世界の各地域の代表的な先進国の投票率と、日本のそれとを比較するスライドを提示し、「投票率が高いことは良いことか」と問いを投げかけました。一般的に、投票率が高いことは良いことと考えられますが、単に投票率が高いことが、無批判に良いと言えるのでしょうか。

 サークル員の大多数は、投票率が高いこと=良いことという意思表示をしました。しかし、単に投票率が高くなったとしても、政治家には若者に対する政治への関心を高める行動を続けてほしいという意見が出ました。諸外国の投票率を見てみると、オーストラリアや北欧、韓国の投票率が高いことが分かります。世界の中には、投票をすることが義務となっており、投票を行わないと罰金あるいは選挙権剥奪の罰則が科せられる国があるのです。

投票率が低い=悪いこと


 今度は逆に、投票率が低いことは一概に悪いことなのか、という問いかけがありました。多くのサークル員は、投票率が低い=悪いことという意見を持っていましたが、それ以外の意見として以下のようなものがありました。

 ・意識を持っている人が選挙に行けば、それで選挙は事足りるのではないか

 ・投票に行かないということは、今の政権に不満がないということであり、それは問題では  ないのではないか

日本における白票


 新聞社の調査によると、2012年衆議院選において、無効票(選挙に行って白票等を投じる)と棄権(そもそも選挙に行かない)の2つを合算すると、全議席の79.2%にあたるといいます。これを覆し、自民党が勝利を収めたという現実の結果となるためには

、95%以上という非常に高い投票率が必要となります。この状況をファシリテーターは「白票党が最大勢力である」と比喩を交えて話しました。

 それでは、なぜこのような状況になっているのでしょうか。財団法人明るい選挙推進協会が行っている「若い有権者の意識調査」によると、20代における、今の日本の政治のあり方に「やや不満・かなり不満」の割合が、1988年、1998年、2009年調査において、それぞれ43%、55%、76%という結果が出ています。

※この先断りのない限り「調査」と書いた場合は、財団法人明るい選挙推進協会が行っている「若い有権者の意識調査」を指すものとします。また、同調査で「若者」という場合は16~29歳を指します。

考えた末の棄権は許されるべきか


 「許される」という意見としては、無理矢理好きでもない政党に投票するよりは「どこも良くなかった」という選択をする方が良い。「許されない」という意見としては、「何も考えずに選挙に行かないこと」と「どこも選ばない」ということは、どちらも結果として見れば、自らの考えが選挙結果には何ら影響を及ぼさない、ということが挙げられました。

 

なぜ若者は選挙に行かないのか


 この問いに対しては、面倒、政治が分からない、自分が求めている政策を掲げている政党が無いという意見が挙げられました。また、国政選挙における全国の投票所数は2007年を境に、減少を続けています。投票所は物理的にも精神的にも遠い存在であるという現状がみえてきます。

 そこで、若者は政治に無関心なのであろうかという疑問が生じます。調査によると、政治に「非常に関心がある」「ある程度関心がある」の20代の合計は、1988年調査では48ポイントであったのに対し、2009年調査では59ポイントと、むしろ増加しています。それでは、なぜ関心はあるのに選挙には行かないのでしょうか。

 調査によると、69.4%の若者が「自分は政府のすることに対して、それを左右する力はないか」の問いに対し「そう」「どちらかといえばそう」と答えています。この状況がいわゆる「政治的無力感」と呼ばれているものであります。

慶應義塾大学における「全塾協議会局長選挙」


 なぜ関心があるのに選挙には行かないのか。先日、2015年4月に行われた局長選挙における自分たちの行動を考察しました。今回の局長選挙は、1回目の選挙で投票率が全体の10%を切ったために行われた再選挙でありましたが、結果はようやく10%台に乗ったという具合でした。

 「大学内の選挙ということで、決して無関心ではなかったはずなのに、どうして選挙に行かなかったのか」とファシリテーターが聞いたところ、選挙が普段の生活において優先度の低いところに位置することが明るみになりました。

 

投票率を高めようという試みはないのだろうか


 現時点でも、期日前投票(選挙期日の公示日または翌日から投票できる)、不在者投票(期日当日に滞在先から投票できる。洋上や南極からもFAXを用いての投票が可能)、在外選挙制度(外国から投票)等の制度が整えられています。そして、2014年6月憲法改正国民投票法が交付され、2018年度以降に憲法改正の国民投票が行われます。改正されると、18歳以上に投票権が与えられることになります。

 国も投票率の低い現状に何もしなくて良いと考えている訳ではありません。この背景には、日本の若者の政府信頼度がOECD.Statの調査で27.8%、世界経済フォーラムの発表で37%と非常に低い水準にあることが挙げられます。

シルバーデモクラシー


<辞書的な定義>

 有権者のうち、高齢者が占める割合が高いため、高齢者の意見が過剰に政治に反映されやすい状態。人口の割合に加えて、年齢別の投票率が高齢者は高く、若者は低いということも、必要以上に高齢者に有利な政策が多くなりがちなことに影響を与える。

<日本の現状について触れると>

 日本の有権者の割合は、39歳以下と60歳以上でそれぞれ28.7%と39.7%です。ただでさえ有権者の割合で60歳以上に分があるのにも関わらず、投票率も39歳以下は60歳以上と比べ低いため、まさに高齢者向けの政治にならざるを得ません。さらに、「高齢者向けの政治になる」→「若者はあきらめる」→「高齢者向けの政治が一層進行する」という悪循環となることが指摘できます。

 

選挙の意義の喪失


 前段落で取り上げたシルバーデモクラシーが進行すると、投票しようとする若者が減少し、選挙の意義が減少します。国が投票率向上に取り組んでも一向に投票率が向上しない現状で、どのようにしたら投票率は向上するのでしょうか。そのヒントが、デンマークの地方選挙にありました。200万人を超える有権者を対象とした分析調査が行われた結果、親と子供の投票率には強い相関性が発見されました。つまり、「子は親の姿を見て投票へ行く」ということです。

 

まとめ


 事前学習の最後には、次の5つの問いが出されました。

1.どうやって子供に投票に行くよう教えるのか

2.何のために投票するのか

3.政治に関わっている、参加していると感じる瞬間は

4.政治に参画する意義とは

5.政治とは何か

 

 1.では「投票をしないのは、損であることを教える」という意見が、2.では「通じるか分からないが自分の意思を表示する」「行かないよりは行く」という意見が挙げられ、3.は「新聞を読んでいる時」「グループや学校のクラスなどの団体で多数決を行う時」という意見がそれぞれ挙げられました。

4.に対する意見としては

 ・実現したい未来を考えて生きること

 ・自分の考えを出し、良い国作りへの1つの力になること

 ・上の世代から言われたことに諾々と従うのを希望しないから

 ・参加しないで文句を言うのは不適切だと考えるから

というものが挙げられました。

5.については、発表ではなく、手元に配られた用紙に自分なりの考えを書くのに留められました。

 

所感


   政治や選挙制度やその歴史について一通りのことを知識としては頭に入れていても、選挙に対する認識や、ましてや政治全体についての理解がほとんど進んでいないことを思い知らされた事前学習であったという実感です。まずは自分たちが投票し、政治に対する意思を表明するべきだと感じました。

 

   課題が山積し、さらに抽象度の高い今回のテーマについて、合計4週間「事前学習」「リフレクション」を通じて理解を深めていきます。

 そして6月12日(金)、NPO法人Youth Create 代表の原田謙介氏と東京都中野区区長の田中大輔氏を講師にお迎えし、トークセッションを行っていただきます。

 原田氏は、東京大学在学時の2008年4月に20歳台の投票率向上を目指し「学生団体ivote」を結成し、現在は若者の政治・社会参画の推進に向けて日々活動されています。また、原田氏はネット選挙導入に際して重要な役割を果たされました。

 田中氏は、現在4期連続で中野区区長を務められています。人口減少・超高齢化という難題を抱える中野区において、今年度は「新しい中野をつくる10ヵ年計画」も策定予定です。

 若者と政治を繋ぐ立場と実際に政治を行う立場の両者の生の議論に触れることによって、政治についての理解を多角度から深められると考えております。

 

 

 

文責:後藤拓野